マルイVSR-10をアメリカ海兵隊「M40」仕様に改造する
趣味でサバイバルゲームをやっていると、一度は狙撃手をしてみたくなるものだ。
私の場合、子供の頃に、映画「山猫は眠らない」や海外ドラマ「ベトナム1967」を見ていた関係で、とりわけベトナム戦争時代の狙撃手、そして彼らが使用しているM40に強い興味があった。
詳しく調べてみると、ベトナム戦争時代にはM40とM40A1が存在していた事が分かるのだが、私が惹かれるのは昔も今も”初期型のM40”。
すなわち木製ストックモデルである。(A1はグラスファイバー製のストック)
今回はマルイのVSR-10をベースに、アメリカ海兵隊M40仕様に改造したこだわりの工程を紹介していきたいと思う。
尚、M40化するにあたり、参考にさせてもらったのがこの資料である。
資料 ←「SMALL ARMS REVIEW」社のM40のレビュー
VSR-10を購入
2019年現在、VSR-10は複数のラインナップがあるが、私が最初に購入したのはすでに何年も前。
この銃が発売された直後であり「プロスナイパー」と「リアルショック」の2種類だけであった。
この2つの内、私が選択したのは「プロスナイパー」バージョン。
「リアルショック」バージョンの「木製ストックもどき」がなんとも微妙だったからだ。
このVSR-10は実銃のレミントンM700をモチーフにしたエアガンである。
実際のM40もレミントンM700をベースに作られているので、M40仕様にするには最適と言える。
ノーマル状態でサバゲ参戦
VSR-10は精度が高く「箱出し」状態でバンバン当たるので非常に楽しい。
当然サバゲで使うには何ら問題がない。
なんら問題が無いばかりか、当時主流だったチューンナップしたAPS-2等をノーマル状態で凌駕する性能だったため、狙撃に適したフィールドであれば面白いようにヒットを稼ぐことが出来た。
完全な自慢話だが、私の最も良い戦績は、1ゲーム中に撃った弾が2発。
ヒット数が3というものである。(跳弾ヒットありのルールにて)
大量ヒットする楽しみもあるが、「ONE SHOT ONE KILL」というスナイパーの格言をも凌駕することが出来たゲームだった。
さて、このように元々性能が良い銃なのであるが、人間というのは欲が無限に湧くものである。
もっと性能アップ(特に命中精度アップ)出来ないかと、サードパーティ製のパーツに手を出すようになっていく。
改造そして後悔
換装パーツや調整で定番になっているのはこの辺だろうか?
- バレル周り(バレル換装とセンター出し)
- チャンバー周り(パッキン変更によるHOP調整や気密取り)
- シリンダー周り(スプリング、ノズル、ピストンの換装)
- トリガー周り(シアー磨き → 強度化 → 丸ごと換装)
私の場合、ゼ○トリガーなどのユニット交換以外は色々と使ってみた。
タイトバレル、ルーズバレル、気密取り用リング、ノズル、スプリングなどなど。
組み合わせを考えたり、換装後の性能を想像してみたり。
確かにその時は楽しかった…。だが、そのうちに気づいてしまうのである。
「箱出し状態が一番性能が良かったんじゃ?」と。
そうなのだ。今考えると全く無駄な投資だったのである。
そもそもサードパーティ製のパーツは適当な理論で構築されており、基本的にちゃんとしたエビデンスがない。
正規メーカー側に正しいデータがどれだけあるのかは定かでないものの、普通に考えれば最もテストするのは開発メーカーなのだから、基本純正が一番いいことになる。
修理まで考慮すればフィードバックもメーカーに集約されると言える。
しかし、最初の内はパーツにお金をかけてしまった手前、精度が上がったと「思い込みたい」心理が働いてしまい、事実を認められないものなのだ。
落ち着いて考えると…色々な疑問を投げかけたくなる。
ノズルとチャンバーパッキンの気密を取るということは接点が増えることに相違ない。
しかし、それってパッキンの歪みを生まないか?
気温による膨張まで考慮して微調整出来るものなのか?
バレルのセンター出しって本当に必要?
実銃では余計な振動をあえて逃がすためにフローティングにしている例もある。
バレルの素材や太さ長さを元に、ちゃんとしたデータはあるのか?
バレルの内径によって色々製品化されているが、結局どれを使うべきなのか?
日本の工業製品であれば、精度的に色々なサイズが作れるはずだ。
それを悪用してバラマキ売りするという魂胆が薄っすら滲み出ている。
強度アップを目的としたそのシアー、純正パーツと比べて精度差はどのくらいなの?
ちなみにVSR-10の場合、1stロットとそれ以降では「セカンドシアー」の形状が若干異なる。
おそらくユーザーから何らかの報告があり、形状の改善が行われたのだろうが、サードパーティ製はこの部分も丸コピーして売り続けていたからお粗末だ。どこのメーカーかはふせる。
というわけで、今回のテーマでは外装品以外の精度アップを目的としたパーツは使用していない。
例外としてマルイ純正の「精密真鍮バレル&新型チャンバーセット」は使用。
また、最低限の改造として
- ボルトハンドルが途中で止まるようにするための加工
- シアー同士の接触面を磨いてトリガープルを軽くする
は行った。
ちなみに、この手の話は「プラモデルが好きか?」「ダイキャストモデルが好きか?」のように、チューンナップ自体を楽しむ人も多いだろうからそれは否定するつもりはない。自分も最初のうちは楽しかった。
だが私の結論としては「命中精度アップとしてのチューンナップは不必要である」だ。
限定したシチュエーションなら話は別かもしれないが、気温差、湿度差、弾の精度差、パーツの耐久度等を全て考慮し、個人で完璧にチューンナップするのは、出来ないとまでは言わないが非常に困難であると思う。それに数十発撃って「集弾性がこれだけ上がった。」とか恥ずかしくて言えない。
うっかり手を出すとお金がいくらあっても足りなくなる。
もちろんコレはVSR-10としての話なので、海外製エアガン等と混同しないで欲しい。
それではそろそろM40化に進む。
木製ストックにハマる
M40化の第一歩は、やはり木製ストックに換装することである。
最初に発売されたのはブナストックだった。その後ウォールナットが出て、M40タイプが出て…と。
出るたびに端から購入してしまい、なかなか恥ずかしい投資となってしまった。
木製ストックもこだわると色々と手をかける事が出来るので実に奥が深い。
一般的にやるのが亜麻仁油による艶出し。ウェスなどに亜麻仁油をしみこませてストックを磨く。
何度も何度も長い時間をかけて行うことで、なんとも言えない艶が醸しだせるのだ。
次にやってみるのが木染め。
木製ストックは購入した時点ですでに染色されている。この染色具合を自分好みに変えてみる作業である。
私がやったのはこれまた定番ではあるが、紙やすりで一皮剥いて色を落としてからワトコオイルを使って染色する方法である。
染色している間、何故かいい感じで漂うコーラの匂い。
尚、木製ストックを使用する場合、マガジンキャッチ付近の調整が必要不可欠となる。
ノーマルのボタンだと短くてマガジン交換が困難になるため、長いものを削って少しだけ頭が出るようにした。
また、マガジンの排出が渋くなる場合もあるので、マガジン前面を削る場合もある。(ストック側の精度により個体差がある)
スリングを取り付ける
木製ストックは物にもよるが、スリングスイベルを取り付けるための穴が空いていない。
M40にはスリングが不可欠。さらに言うと革製でないと雰囲気が出ない。
という事で、購入した「スリングスイベル」を取り付ける為の穴を開けていく。
Uncle Mike’sの説明書には英語でこう書かれている。
簡単に訳すとこんな感じか。(適当翻訳なのでツッコミなし)
フォアエンド スイベルベース
トリガーの13~17インチ前につけるのが理想である。
1.ストックからバレルとアクションを取り除く。
2.トリガーガード面で上向きにし、万力に固定する。
3.アンクルマイクスステップドリルNo1か、3/16インチ(0.47625cm)ドリルを使用して、必要な位置でバレル側まで穴を開ける。
4.ストックをひっくり返し、ステップドリルか、23/64インチ(0.91281cm)ドリルでバレル側の穴を1/4インチの深さまで皿穴にして、マシンナットを設置する。
5.ホワイトスペーサーにマシンネジを通し、バレル側にはみ出る部分をカットする。
6.ナットでネジを締める。
リア スイベルベース
リコイルパッドかバットプレートの2~2.5インチ前につけるのが理想
1.トリガーガード面で上向きにし、万力に固定する。
2.アンクルマイクスステップドリルNo2を使用。
7/32インチ(0.555625cm)ドリルで1/8インチ(0.3175cm)の深さの皿穴を開ける。
5/32インチ(0.396875cm)ドリルで同じ穴に7/8(2.2225cm)の深さの穴を開ける。
3.木ネジを適切なサイズの釘などを使用して穴にねじ込む。
本当は専用のドリルが欲しかったのだが、妥協して近いサイズのドリルで作業。
正確な作業をするために旋盤も欲しかったのだが、他にDIYの予定はなく、木ストのためだけに購入するわけにいかず断念。
太ももで挟んで固定しつつ慎重に穴を開ける。
パキ!嫌な音がした。
はい。見事に失敗し、最初のブナストックの穴は無様な出来になりました。
※ この時のストックはその後再利用し、ソードオフVSRとして蘇ることになる。
さて、痛い出費だが新しい木ストを購入する。今度は失敗出来ない。
適当な木片で何度か練習し、再度挑戦する。今度はなんとか綺麗に出来た!!
尚、以下の動画を見るとすごく参考になる。
ではスイベルにスリングを取り付けてみる。
「イイ感じ」なのだが、取り付けた直後はスリングの革がまだまだ固く、エイジング感が出ていない。
これも何度かサバゲをする内に柔らかくなっていい味が出てくるだろう。
この手の物は時間が大事な要素でもあるのだ。
スコープを考察する
最初の内はゲーム用にチープなスコープを使っていたが、M40化するのであれば、これも考え直さないとならないポイントだ。
当時のM40で使用されていたのは「Redfield」社の3-9倍のスコープである。
同じ物を見つけるのは非常に困難だろう。実物が見つかっても高価になるのは必死。(実際メルカリで実物が売り出されていたことがあったが、とても手の出せる金額ではなかった…)
こだわりはあるものの、そもそもベースは玩具なので、気分だけでもそれらしい物をとあれこれ検討してみた。
ありました!いいのが!
同じ「Redfield」社で倍率も同じ。値段も手頃。
今は亡き米国の通販ショップにて国際購入。時間はかかったものの、無事に手元に届く。
↓コレ (バトラーとマウントリングは後から取り付けたもの)
RedField Riflescope Tracker Model 800631 3-9×40
「追跡者」とは名前もカッコイイ。大きさもちょうどいい。
レンズのコーティングはグリーンで、レティクルは「クロスヘアー」
前に使っていたスコープと比べると、明るさが雲泥の差である。
その他の画像はこちら
尚、Redfield社は現在Leupoldの傘下にある。
ちょっと前には当時の復刻モデルも発売されていたようだ。
次に考えるのはマウントベースとマウントリングである。
完全に好みとなるが、高い(値段ではなく位置)マウントリングでの運用はM40仕様としては似合わない気がする。
極力低いマウントリングを使い、マウントベースはM40タイプに換装。
次にバトラーキャップ。これについてはベトナム戦争当時に使われていたのかどうか調べきれていない。
ゲーム中、パカッ、パカッっと開く動作が気分を盛り上げてくれるので、取り付けることにした。
全てを取り付けるとこんな感じ。
おまけ:
マウントベースを何度か着脱していたら、純正アルミレシーバーのネジ穴をナメてしまった。
ヘリサートを使って修復使用もしていたが、気分一新の為、別のレシーバーに置き換えている。(上の写真は既に入れ替わっている物)
素材はジェラルミン サポートリングが使える
素材はジェラルミンである。
それと、見てわかるだろうか?純正と同じようにサポートリングが使えるようになっている。このレシーバーは発売してまもなくマルイからクレームが出たようで発禁となってしまった。
今となってはなんだか貴重な気がする。メーカー名は忘れてしまった。
メタル化
木スト、スリング、スコープと段階を踏んでM40化してきた。
ここであらためてVSR-10を見直してみた。
「トリガーガードがプラのままやん…安っぽいやん…」
ということで、レシーバーに続きトリガーガードも換装。
たったこれだけのパーツだが8000円(くらいだったと記憶)もする。
完全に大人の趣味なのだ。
ストックアーモポーチ
木製ストックの場合、頬付した時の感触はプラやファイバーよりずっと心地よく感じる。
しかし、それでもアーモポーチの感触には及ばない。
ダミーカートを入れておく事も出来るのでディテールもアップする。
最初は使わないつもりだったのだが、モンテカルロタイプのストックが入手出来ていないこともあり、最終的に取り付けることにした。
私が選んだのはEAGLE社の物。黒とODの2タイプを購入。
頬付部がスエードになっており最高の感触なのだ。
ただこのスエードには大きな落とし穴がある。何度か使用して顔の汗や脂を吸い込むと、素材自体が劣化して擦るとボロボロ剥がれるようになっていく。気づかずに使っていると頬にくっついて黒くなるのだ。
私はこれが発生した際、擦りまくってボロボロを全て剥がしてしまった。
購入当初のスエードとしての感触は薄らいでしまったが、それでも柔らかく顔を受け止めてくれる。
ポーチに取り付けるダミーカートは、当然7.62mmのフルメタルジャケット。
弾頭付き、弾頭なしを織り交ぜて雰囲気を出すことも可能。
プライマー部分が空いていると気分が盛り上がらないので、ダミーを装着することも忘れない。
ちなみに、プライマーには金色の物と銀色の物があるが、実弾ではどちらの場合もあるようだ。
尚、ダミーカートはしばらく放置しておくと酸化して色が変わってしまう。
その為、たまに取り出してピカールで磨く必要がある。(撮影する際も必死に磨いた。)
なお、ポーチ内には六角レンチとゼロイン調整用のコインを収納
最終形
外装が決まったら、後は動作チェックとなる。
木製ストックのため、アクションとストックを連結する2本のネジを締めすぎるとレシーバーとアウターバレルのセンターがズレる様で、ボルトハンドルの動きが渋くなる。
しかし、そのへんの調整は経験値でカバーする。
最終的な動きとしては、ボルトハンドルを引き、本体を斜め下向きにするだけでシリンダーがスーっと元の位置に収まる動きが実現出来た。
シリンダーヘッドとチャンバーパッキンの接合部分についても特に抵抗は感じられない。さすが純正パーツ同士。自分でもウットリする動き。
夜戦で使用してもきっと静かだろう。
トリガーについては、シアーをピカピカに磨きすぎたようで超超フェザータッチとなってしまった。あまりに感触がヌルヌルしているので、ネタとして友達に触らせたら改善する予定である。
ゲーム用に再調整!?
どうも貧乏症なのか、せっかく組み上げたVSR-10なのに、そのままの形でゲーム投入していない。
スコープに傷がついたりしたら嫌なので、それほど高いスコープでも無いのに、わざわざもっとチープな物に戻してしまうのだ。
またバランス的にアウターバレルが短いような気がするので、写真のように一見アウターに見えるサイレンサーを取り付けている。
さらにスコープマウントに水平計を取り付けてみた。
が、安物なので水平が取れていない。なんちゃってアイテムなのである。
余り部品でもう一丁組み上げる。
VSR-10が発売された当時は周りのメンバーがこぞって購入・改造していたものである。
そのため、純正パーツが要らなくなった人から譲って貰ったり、某ショップでバラ売りされていたパーツを追加購入することで、極めて安い投資でもう一丁組み上げることができた。
前述した「穴あけに失敗した木スト」や「初期のブナストック」も手元にある。
で、これらを使って以下のようなショートタイプを作ってみた。
1つ目はソードオフVSR-10。
ゲームでは全く使いものにならない。コッキングする際に肩当てが出来ないのだから使いにくすぎる。当然と言えば当然である。
と、いうわけでプリンキング用。
2つ目はミニミニVSR-10
こちらは体型が小さい人やインドア戦などでそこそこ利用できる。
こじんまり構えたい人向けである。
メインスプリングを強力な物に変更しつつ、シリンダー内部にスペーサーを埋め込むことで、初速を落とさずにショートストローク化している。
インナーバレルについてもパイプカッターで切り落として短くした。
切断面のせいで精度が悪くなることを心配したが、影響は感じられなかった。
まとめ
現在、実銃の世界では湿度の影響を受けやすい木製ストックはあまり使用されていない。
木製ストックは完全に趣味の領域へ入ってしまった。
だがサバゲーではまだまだ活躍出来るし、何よりかっこいい。
使い続けるほどにいい味が出てくること間違いなしである。
最近流行りのゴテゴテした銃も面白いが、たまにはレトロ気分で木ストックの銃でサバゲしたいものである。
最後にテレビ朝日調でひとつ。
「この銃もまたーーー、実に撃ちたくなる銃であるーーー」